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スイングスピードを上げても打てない、たった一つの理由

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EVIDENCE
MLB公式の計測データ(2024〜2025)/分析者による相関分析/物理モデル

「スイングスピードを上げれば飛ぶ」。これは半分正しく、半分足りません。

2024年からMLBは、全打者のバット速度を試合中に計測して公開しています。そのデータが教えてくれたのは、速さは大事だが、速さだけでは成績が説明できないということでした。

2024年のMLBで、平均バット速度が最も速かったのはジャンカルロ・スタントン選手の81.2マイル(約131km/h)。最も遅かったのはルイス・アラエス選手の63.1マイル(約102km/h)でした。

差は18マイル、およそ29km/h。

アラエス選手は、この年まで3年連続で首位打者です。スタントン選手は本塁打を量産する打者です。

どちらもレギュラーで、どちらも成功しています。同じリーグで、これだけ違うスイングが成立しています。

分析サイト FanGraphs のベン・クレメンスが、2024年のデータでバット速度と各指標の相関を調べました。

バット速度と…相関係数
打球の質(xwOBACON)0.51
空振り率0.46
三振率0.41
総合的な打撃成績(wRC+)0.11

バット速度は「打球の質」と「三振の多さ」の両方と相関します。速く振れば強い打球は増えるが、空振りも増える。

差し引きすると、総合成績との相関はほぼ消えます。

さらに、前年から翌年にバット速度が上がった選手の成績変化を追うと、バット速度の変化と成績の変化の関係は「ほぼ存在しない」(決定係数0.03)という結果でした。

MLBは「Blast(ブラスト)」という指標も作りました。定義は、速いスイングで、かつ芯で捉えた(理論上の最大打球速度の80%以上を出した)打球

この Blast の割合は、新しい指標の中で総合成績と最も強く相関しました(相関0.36)。

Blast になった打球の成績は、打率.563、長打率1.182。速さと芯が同時に揃うと、結果は桁違いになります。

面白いのはフアン・ソト選手です。平均バット速度は73.6マイルとリーグ平均並みですが、2025年の Blast 率はリーグ首位級の26.5%でした。

速さは平均、芯で捉える率が高い。速さと芯は別の能力で、両方が揃った打球が成績を作ります。

芯で捉えたとき、打球速度はおよそ「バット速度の1.2倍+投球速度の0.2倍」です。バット速度を1マイル上げると、打球速度は最大で1.2マイル上がります。

ただしこれは「芯で捉えれば」の話。実際の打球データでは、バット速度が10マイル上がっても平均打球速度は5.5マイルしか上がりません。

速く振るほど、芯を外す打球が混ざるからです。

だから、速さを上げる練習と、芯で捉える練習は、別々に必要になります。

これは「速く振らなくていい」という話ではありません。バット速度が打球の質を決めることは、データが示しています。

小学生のうちに全力で振る習慣をつけることは、多くの専門家が勧めています。

大事なのは、評価を2つに分けることです。

  • 振る速さ(出力):全力で振れているか。年代・体格に対してどうか
  • 芯で捉える力(コンタクト):その速さを、打球に変換できているか

「打球が飛ばない」という同じ悩みでも、速さが足りない子と、速さはあるが芯を外す子では、必要な練習が正反対です。前者に「もっと当てにいけ」は逆効果で、後者に「もっと強く振れ」も逆効果です。

MOONSHOT では、この2つを別々の項目として見ます。動画と、機器があれば打球速度で、どちらが今の打球を止めているかを切り分けます。原因が違えば、必要な練習も違います。

本記事の数値は第三者の研究・計測データであり、当塾の指導実績ではありません。研究の対象年代・条件は本文と出典に記載しています。

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